セクハラ教師も3年で復帰? ハラスメント大国・日本の教育現場にはびこる問題とは

■広島県教育長が宣言「わいせつ、セクハラは許しません」

 広島県教育長になった友人平川理恵さんは「広島県の公立学校において,わいせつ,セクハラは許しません」と宣言した。「懲戒処分の指針」を改正し、わいせつ・セクハラに関する処分についてはより厳しい姿勢で臨むという方針を打ち出したのだ。

 平川さんは全国初の女性民間校長という前歴を持つ。また今回47都道府県でたった3人しかいない女性の教育長に任命されたばかりだ。民間企業や経営者としての経験豊富な彼女は、いく先々で改革を打ち出している。懲戒処分指針改正に関する彼女の思いを聞いてみた。

平川理恵・広島県教育長

「教育長になる前から、児童生徒に対するわいせつ・セクハラの処分が、時として甘いな、と感じていました。私自身が女性,母親ということもありまして、我が子であれば、我が事であればという風に思えば、絶対に許せないという思いから、就任直後からこのことについて課題提起し、教育委員会の中で議論し、調整してきたんです」

 なぜこのような宣言が必要なのか? 重い処分を下しにくいのか、それには公務員である教師が守られている法律があるからだ。

「地方公務員法により、公務員は処分された方が訴えることができます。処分が他の同様の事例より「逸脱している」と判断されれば、処分権者が裁量権を逸脱・濫用しているとして、裁判に負けることもあるのです。

 そこで「懲戒処分の指針」の「基本事項」に「わいせつ・セクハラはより厳しい姿勢で臨む」と、強くメッセージとして発し、広島県では、学校でのわいせつ・セクハラは絶対ダメ!ということを、内外に明確に打ち出したのです。このような規定を設けているのは、他の都道府県や政令指定都市の教育委員会では例がありません」

■セクハラで免許失効でも3年で復帰?

 調べてみると、下記記事のようにセクハラでクビになった教師がまた何年後に同じような事件を起こすという事例が少なくない。

「児童ポルノ法で罰金の講師、4年後にまた逮捕…なぜ教壇に立ち続けることができた?」

 一体なぜなのか? なぜ、わいせつ、セクハラ事件で処分された教師が教壇に立ち続けることができるのだろうか?

 抜け道はあるのだ。「懲戒免職」になれば免許失効となる。しかし懲戒免職になる前に自ら辞めて、他県で新たに採用されることもある。わいせつ時間で必ずアウトという運用になっていないのだ。また免許失効になっても、大学で学んだ教職の単位は取り消しにならない。なんと3年で教員免許の再交付申請ができる。これで学校に戻った人もいるのだろう。罪を償えばいいという考え方もあるが、わいせつ行為はさすがに復職しては困るだろう。子どものそばにいる仕事に就く人には、もっと厳格なスクリーニングがあってほしい。

■わいせつで免職、2016年度には226人

 他国はどうしているのだろうか? フィンランド大使館に問い合わせたところ、こんな答えが返ってきた。

「まずフィンランドで教師になるためには、前科がないか事前にチェックされます。ここで性的虐待などの犯罪歴があることが判明すれば、その者は教師にはなれません(ただし犯歴は20年経つと消えてしまいます)。

 性的虐待に関しては、被害者が16歳以下であれば処罰はより重いものになります。ケースバイケースですが、数ヶ月から数年の刑期、賠償金です」

 厳罰だけでなく、教育現場での自主的な取り組みもある。

「教育現場では、性的虐待を起こしそうな教師を防ぐためのキャンペーン(教師と保護者の緊密なネットワーク)が行われていたり、子供が虐待を受けた場合は親や教師に話すよう奨励されています。子供たちへの性的虐待に関する教育がきちんとなされています」

 日本ではどうなっているのだろうか? 文科省に問い合わせてみた。

「文科省から通知を出しているので、わいせつにかかる懲戒処分は厳しくなってきている。また教員免許状を全国で一元的に管理する教員免許管理システムについて、来年度から2年かけて刷新する予算を要求している」とのことだ。

 処分の厳しさは処分される教師の数に表れている。

 「1990年度にわいせつ行為で懲戒免職になった公立小中学校の教師はわずか3人」だった。しかし2012年度には40倍の119人。(『スクールセクハラ』池谷孝司より)文科省の資料によれば2016年度には全国で226人。

「急に教師の質が落ちるはずはなく、見過ごされてきたのが厳しく処分されるようになっただけだ」(『スクールセクハラ』)

 本書には16才当時性的虐待を受けた女性が30代になってから、加害者の教師と対決する場面がでてくる。「魂の殺人」と言われる性的虐待を、父親ほどの年齢の教師から受けた彼女は、拒食症になり、自己評価が極端に低くなり、「まともな恋愛はしていない」という。その間、教師はずっと教壇に立ち続けている。「お互いに楽しんだ」「女性としてみていた」と言い訳し、対面に立ち会った記者は「まだやっている」と直感する。

 処分は増えていても、このような教師が長年教壇に断っていることを思えば、氷山の一角なのだ。

 免許失効でも返納しない、偽造などの手口もあるという。そのようなことを防ぐために、個人名で検索したら、その人がどの教員免許を持っている状態なのか知ることができる。それが今回の管理システム刷新なのだ。

「そこに犯罪履歴、懲戒処分などの情報を入れることはできないのですか?」と聞いたところ、「わいせつ事案については 遡って記録があるようにしたほうがいいのではという議論はある」ということだったが、まだ実現の段階ではないようだ。

 池谷孝司記者は「第三者委員会」による調査で、調査のシロウトである校長に事実確認がゆだねられている状態を改善するべきと本にも書いている。

 ぜひ、スクールセクハラに関して「有識者による検討会」を開いてほしい。

■フランスは8才から「愛情生活と性に関する授業」

 より重い処分や教員免許情報の一元管理など、制度によってできることもあるが、さらに必要なのは教育だと思う。フィンランドのように「親も子どももセクハラを防ぐために、きちんと被害を訴えることができる教育」が必要だ。

 フランスの友人に聞いたら「フランスの場合、日本と一番大きく違うのは「身体の尊厳への認識」ではないかなと感じます。身体というのはかけがえのない大切なものだから、容易に触らせてはいけない」

フランスでは8才から性教育をする。(「フランス人の性」(より)「親や教師は性教育には不向き」として、専門の団体「プランニング・ファミリアル」から専門家が派遣される授業があるのだ。授業は「性」だけではなく「愛情」とセットで教えられる。生理やおしべとめしべでは、愛情とセックスの関係は教えられないので、これは衝撃だった。授業名は「愛情生活と性に関する授業」だ。

 愛情とセックスや、最低限の性のNG事項、「未成年者とのセックス」や「同意のないセックス」などについて、日本は誰がきちんと教えているだろうか? 

 まずは教師に対する教育から入る必要がありそうだ。真面目に頑張っている先生が多いことはよく知っている。しかし、一部には教育が必要な教師もいるのだ。


*2018年10月4日付 Japan Times 掲載の「Crack down on sexual harassment in schools」を翻訳、転載。

Source: ハフィントンポスト