最高裁判事候補の性的暴行疑惑、27年前も今も、アメリカ議会は迷走している

アメリカの上院司法委員会で9月27日行われた公聴会で、クリスティーン・ブレイジー・フォード氏は、最高裁判事の候補に指名されたブレット・カバノー氏から受けた性的暴行について証言した。

権力を握る男性に関する真実を語ることは、女性たちにとって、未だ重荷となる。

27年前の1991年、最高裁判事の候補として指名されていたクラレンス・トーマス氏から性暴力の被害を受けたと証言したアニタ・ヒル氏に対し、アメリカ上院議会がとった態度は「国家の恥」と見なされている。

クリスティーン・ブレイジー・フォード氏に対する扱いも、さほど変わりがなかったとの印象を後世に与えるだろう。

勇気を出して告発した女性が、二次被害を受ける

あれから27年たった現在、女性たちはいまだに自分たちの言い分を信じてもらうには、過去を洗いざらい晒し、抱え込んだトラウマを具体的に説明するよう強いられている。

「若い女性たちが立ち上がり、『No more(もう泣き寝入りはしない)』と公言しているのに、カミングアウトする女性の処遇という点で、アメリカの政府機関には進歩が見られません」と、上院司法委員会の幹部、ダイアン・ファインシュタイン議員(民主党・カリフォルニア州)は批判した。

「女性の記憶や発言の信ぴょう性が攻撃を受けるケースが多すぎます。基本的には、裁判となり、自らを守る必要に迫られるのです。さらにその過程で二次被害を受けることが多いのです」

フォード氏(左)が証言したのは、アニタ・ヒル氏が声を上げてから27年後のことだ。

クラレンス・トーマス氏からセクハラを受けたとヒル氏が証言したとき、彼女は全員白人男性で構成された上院司法委員会と対峙した。委員会は、ヒル氏が話す内容が理解できないのか、取り扱う気がないといった様子だった。その後上院は、何事もなかったかのようにトーマス氏の最高裁判事就任を承認した。

2018年、上院司法委員会の顔ぶれは1991年と比べて多様化した。しかし、これは民主党側に限った話だ。民主党側は女性と有色人種の両方とも委員会に加わっている。共和党側は、未だに全員が白人男性だ。

世論の反応や、委員の構成が偏っていると見られる可能性が高いことを意識して、上院司法委員会のチャールズ・グラスリー委員長(共和党・アイオワ州)は、アリゾナ州の女性検事レイチェル・ミッチェル氏を起用した。ミッチェル氏は女性への性犯罪を専門とし、共和党議員団の代理人として、フォード氏とカバノー氏の両方に質問した。

写真を見ても、ミッチェル氏を起用した意味は全くないようだが。

白人男性しかいない上院司法委員会の共和党側議員団。代理人のレイチェル・ミッチェル検事がクリスティーン・ブレイジー・フォード氏に質問する間、耳を傾けている。 アニタ・ヒル氏が1991年に証言した時、上院司法委員会は全て男性で構成されていた。

検事を起用したのは裏目に出た。ミッチェル氏はフォード氏の証言から矛盾を引き出そうとしたが失敗した。質問はまとまりがなく、矛盾点をあぶり出す効果がなかったようだ。ブレイジーさんに責任があるかのような印象を与えようとした質問内容だった。

「裁判ではありませんからね」と、カマラ・ハリス上院議員(民主党・カリフォルニア州)がフォード氏に念を押した。

「共和党側は大惨敗だ」。FOXニュースの司会者クリス・ウォレス氏はそう語った

ヒル氏の時と同じく、フォード氏の証言は人々の心をつかんだ。ヒル氏は1991年にセクハラについて証言した。セクハラは当時も蔓延していたが、明るみになることはほとんどなかった。フォード氏の証言、堰を切ったように国家的な問題となった。9月27日にブレイジーさんは、ティーンエイジャーの少女が、少年たちからどんな目に遭わされるかを語った。少年たちは少女を権力争いや、男友達との絆を深めるために利用するものだ。

「私が片方に押し倒されている間、2人とも笑い声をあげていました。友達2人でとても楽しんでいました」と性的暴行疑惑に関して、記憶に最も鮮明に焼き付いている部分について述べた。

27日の公聴会前日の27、フォード氏は会の冒頭で証言する内容を公開していた。その中で、フォード氏とカバノー氏が10代の頃、カバノー氏から性的暴行を受けたという申し立てについて以下のように書いている。

私はベッドに押し倒され、ブレットが覆いかぶさってきました。ブレットは体中を触り、下腹部に腰を押し付けてきました。私は叫び声をあげて、下の階にいる誰かに気づいてもらおうとしました。逃げようとしましたがブレットの体重は重かったのです。

ブレットは体を触って服を脱がせようとしました。ひどく酒に酔っていて、私の方は服の下にワンピース型の水着を着ていたので、上手くいきませんでした。ブレットはきっとレイプするつもりだったんだと思います。

叫んで助けを求めようとしたとき、ブレットは手を私の口に押し当てて、声を出せないようにしました。この時が一番恐怖を感じた瞬間です。そして人生で最大のトラウマになっています。息をするのも大変で、ブレットが誤って私を殺すのではないかと思いました。

フォード氏が涙を流しながら声明文を読む姿に、人々は心を大きく動かされた。

「フォード氏の冒頭の証言を読みましたが、実際に証言したものとはまったく別物ですね。実際に聞いたもの、そして彼女が表現したもの…読んだものとは全く違うものでした」と、FOXニュースのキャスター、ブレット・ベイヤー氏は言った。

27年経っても同じ。告発した女性たちは、同じ失望を味わった

フォード氏はヒル氏と同じように、ホワイトハウスと上院の共和党議員たちに対峙した。彼らはできるだけ早くカバノー氏を承認したいと思っているが、フォード氏の証言が採決の直前にされたことを批判している。

どちらの女性も、世間の注目をあびることを望んでいなかった。しかしメディアが彼女たちの話を公表したので、2人とも公の場に押し出された。

ヒル氏が証言できたのは、下院の女性民主党議員たちが男性議員に対し、彼女に証言させるよう圧力をかけたからだ(当時の上院は、女性の民主党議員はバーバラ・ミカルスキ氏だけたった)。

当時議会の過半数を占めていたのは民主党だったが、共和党議員がヒル氏に対して”振られた恋人””嘘つき””日和見主義者”などとレッテルを貼り、彼女の信頼性を激しく非難しても、民主党がヒル氏を擁護することはほとんどなかった。

27年後、民主党が共和党に圧力をかけ、フォード氏はようやく証言した。共和党はフォード氏のために公聴会を開くことを認めたが、カバノー氏の指名採決をその翌日に定めた。

上院共和党は、暴行の現場にいたとフォード氏が主張するマーク・ジャッジ氏の公聴会出席を拒否した。フォード氏とは別に、カバノー氏からの性的暴行を訴えている2人の女性についても、公聴会の証言に同意していない。1991年に上院司法委員長だった民主党のジョー・バイデン前副大統領は、ヒル氏の主張を裏付けると見られた女性たちに公聴会への出席を求めなかったのと同じケースだ。

連邦捜査局(FBI)は1991年、ヒル氏の訴えについて捜査した。共和党やホワイトハウスは当初FBIの調査を認めなかったが、公聴会の終了後、上院司法委員会がカバノー氏の最高裁判事に就任する人事案を承認した後、ようやくトランプ大統領はFBIに捜査を指示した。上院本会議での指名採決は、1週間ほど延期される。

「委員長、あなたと私は27年前ここにいました」と、パトリック・レーヒー上院議員(民主党、バーモント州)は27日、共和党のチャールズ・グラスリー委員長に語った。「あの時、上院はアニタ・ヒル氏を失望させました。私は彼女を信じると言いました。しかし今、(カバノー氏からの性的暴行を訴えた)3人の女性が、ヒル氏の時以上に失望するのではないかと懸念しています」

公聴会の後、共和党の上院議員らは、彼女の証言にはそれほど心を動かされなかったし、カバノー氏よりもフォード氏を信用するに足る証拠があるとは思わないと語った。

「公聴会が機能しなかったと分かるまで、27年もかかるとは思いもしませんでした」。女性や家族の平等を求めて活動するNPO「ナショナル・ウィメンズ・ロー・センター」の代表ファティマ・ゴス・グレイブス氏はそう語る。「若い世代がこれを見ると、”どうしてこんなことが許されるんだ?”と言うでしょう。上院は完全に世論と乖離していますね」

ハフポストUS版と世論調査会社ユーガブ(YouGov)が9月17、18日に行った調査によると、フォード氏の申し立てについて、上院はヒル氏の時よりも適切な対応をしていると考えている人はわずか10%だった。24%がヒル氏の時よりもと答え、34%がおおよそ同じだと答えている。

ハフポストUS版より翻訳、編集しました。

Source: ハフィントンポスト