お客さんに商品の宣伝を任せる。「アンバサダー」戦略が注目されている理由

企業PRの新しいかたちとして、「アンバサダー・マーケティング」が注目されている。

商品やサービスのファンとなった普通の消費者が、企業の代わりに宣伝をする方法のことだ。

アンバサダーとは、英語で「大使」という意味。ファン一人ひとりが商品やサービスの魅力をネットで情報発信していく。

テレビやCMなど多くの人に届ける広告が「効かなくなった」と言われる時代。SNSの登場と同時に広まったとされるこの手法は、なぜ注目されているのか。有名人ではない一般の人の「口コミ」は本当にパワーがあるのか。アンバサダー・マーケティングの現場で探ってみた。

私が参加したのは、6月15日に開催された第4回座談会。会場は銀座の「アイコニック銀座」でした。

「日本初公開の製品を、今日この場で皆様にお見せ致します」。2018年6月15日夜、東京・銀座のフランス料理店で開かれた「アンバサダー座談会」。外資系IT企業デルの新しいノートパソコン「New XPS 15 2-in1」が披露された。デルのコンシューマー・マーチャンダイジング・マネージャーの巽真也さんが話す開発秘話に、アンバサダーたちは耳を傾けた。その後、デルの社員と参加者が1時間語り合った。

座談会後は、Twitterやブログに投稿が相次ぐ。

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座談会の会場に銀座のレストランや高級ホテルを選ぶ理由は、アンバサダーがSNSで発信する際の写真映りを意識したものと言えるだろう。実際に、この座談会では、プロのフォトグラファーによる「写真の上手い撮り方・PCでの編集の仕方」講座も開かれた。

デルは、2016年末から、パソコン好きの人やデル製品の愛好者などに向けた「デル アンバサダー・プログラム」を立ち上げた。アンバサダーに登録すると、製品の最新情報をいち早く得られるほか、製品の体験モニターやアンバサダー限定のイベントに参加できる。人数は6000人あまりに膨れあがった(2018年8月1日時点)。

アンバサダーにとっては、単なるお客さんではなく、デルの「関係者」になる気分を味わえる。一方、企業にとっては、消費者の声を直接聞くことができるほか、アンバサダーがSNSなどを通して、商品のPRをしてくれるメリットもある。

新製品「New XPS 15 2-in-1」を発表するコンシューマー&ビジネス事業統括本部コンシューマー・マーチャンダイジング・マネージャーの巽真也さん。

企業がPRをする場合、これまではテレビ広告などマスメディアを使うことが主流で、多くが「有名人頼み」だった。誰もが知っている俳優や文化人が商品のPRをマスメディアやネットですれば、数十万人から数百万人に影響を与えることができるからだ。

だが、個人が自由に意見を投稿できるSNSの登場が、企業PRの手法を変えた。普通の消費者でもTwitterやFacebookなどで、数百人から数千人のユーザーに情報を届けることができる。数の規模は少ないが、情報の受け手側は、有名人より身近に感じる。さらに、本当に商品が好きな人たちがPRをするため「安心感」や「信頼感」があるという。「アンバサダー・マーケティング」が注目される理由だ。

「広告っぽさ」を消す目的もある。テレビや新聞だけではなく、電車の中吊りからスマホの画面まで、広告があふれている時代。商品の魅力を押しつけられることに嫌気がさしている消費者が少なくない中、アンバサダーは、企業の担当者から商品づくりの思いを直接聞くことできる。押しつけではなく「対話型」の手法で、その魅力を知ったアンバサダーが、同じように「対話」をしながら、商品をPRしていく。

日本では、食品大手のネスレ日本による「ネスカフェ アンバサダー」が有名だ。企業側が職場などにコーヒーマシンを無償で提供するシステムで、オフィスでコーヒーを飲んだり、社員同士がすすめあったりする習慣が根付き、「コーヒーのオフィス市場を広げた」とマーケティング業界で注目されている。

デルのコンシューマー&ビジネスマーケティング統括本部部長で、アンバサダー・プログラムの仕掛け人でもある横塚知子さんに、アンバサダー座談会の狙いについて聞いてみた。

アンバサダー・プログラムの仕掛け人、横塚知子さん

――アンバサダー・プログラムを企画した狙いは何ですか?

「これまでお客様の声をダイレクトに聞く機会があまりなく、商品を買ったお客様のデータでニーズをつかもうとすることが本当に正しいのかどうか、社内で議論を重ねてきました。お客様が製品をどのように考えているのか、どのように使っているのか、パソコンやデルに対する思いがわからないままでいいのかということになり、お客様と直接対話する機会を自分たちの手で作ろうと考えたのが、アンバサダー・プログラムを立ち上げたきっかけです」

――座談会はアットホーム的な空気で、社員もお酒や食事を楽しみながら語り合っており、手作り感が満載でした。

「今日の座談会も、すべて社員が自分たちで考えたものです。プログラムをスタートさせた頃からアットホームな雰囲気を作ってきました。アンバサダーの皆様も、社員も緊張しないでリラックスしながら対話できるように心がけています。座談会のテーブルも、男女比を考えたり、社員の人数が多くなりすぎないように配置したりしています。座談会が終わった後も、アンバサダーの方から製品担当の社員に直接『今日は楽しかった』と感想をお寄せいただくこともあれば、ご要望や改善点をお知らせいただくこともあります」

――今後もアンバサダー・プログラムを通じて、どのようなことを伝えていきたいですか。

「3カ月に1度はこうした会を催して、アンバサダーの皆様と私たち社員が同じ目線で会話ができるようにしていきます。何も接点がない中でイベントにお越しいただいても、製品やサービスに対する認識のギャップが大きすぎるので、お客様と会話するのが難しくなります。

デルの製品を使ってみたいと思っていただいているお客様と、同じ言語で話ができる環境にするのが、この座談会の目的です。何よりもデルという会社を知ってもらう、私たち社員がどのような思いで仕事しているのかを知ってもらうことを大切にしています。

私たち社員一人ひとりが熱い想いを持っていることを感じてもらい、私たちの”人間らしさ”みたいなものを、アンバサダー・プログラムを通じてこれからも伝えていきたいですね」

Source: ハフィントンポスト