サマータイムは日本に合わないのか 戦後に導入・廃止された経緯も、残業が増える?

 「政府として取り組める、1番やりやすいというかやって欲しいのは『サマータイム』。(総理は)『なるほどね』『それが1つの解決策かもしれないね』と、非常にまじめに聞いてくださった」

 27日、東京五輪組織委員会の森喜朗会長らが官邸で安倍総理と面会した際、酷暑が予想される東京大会の暑さ対策として「サマータイム導入」を要請した。サマータイムとは、日照時間の長い夏に一斉に時計の針を1~2時間進め、太陽が出ている時間帯を有効活用しようという試みのこと。すべての時間が早まるため、明るい時間に家族で外出したりスポーツを楽しんだりできるなど、余暇を有効に使うことができるようになる。

 実は昭和23年(1948年)、戦後の日本でも、健康福祉や省エネという名目でGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)がサマータイムを導入した。しかし、労働時間の延長や慣習に合わないなど国民の抵抗が強かったため、4年間で廃止されている。今回のサマータイム導入の要望に対して菅官房長官は、「暑さ対策の1つのご提案として受け止めるが、国民の皆さんの日常生活に大きな影響が生じるものである」と消極的な姿勢をみせている。

 サマータイムについて街の人に聞いてみると、「やっぱり働く時間だけが長くなってしまうんじゃないかという懸念はある。(仕事は早く)終わらないと思う」「あまり日本人には馴染まないんじゃないかと思う。日本人は今まで通りやったらいいのでは。長いことやってきた習慣を変えるというのは大変なことだと思う。賛成はしない」といった反対の声があがる。一方、小学生の時にサマータイムを経験したという80代の男性は「前やって良かった。昔は1時間(の時間変更)、だから今度も賛成。そんなに(生活リズムが)狂った記憶はない」と、自身の経験から語った。

 賛否両論のサマータイム。これまで何度が議論に上がってきたが、果たして本当に必要なのか、導入されたとしたら人々の生活はどう変わるのか。7月31日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では議論した。

 今回、森氏が提唱しているのは、サマータイム期間中は”最大2時間”時計の針を進めるというもの。例えば、最高気温41.1度を記録した7月23日の埼玉県熊谷では、始業時間の気温は午前9時の34.4度から午前7時の29.9度に、終業時間の気温は午後5時の37.9度から午後3時の39.3度となる。

 サマータイム導入のメリットについては、経済波及効果約9700億円(2004年)、明るい時間の帰宅による交通事故・犯罪の減少、省エネルギー効果(年間:ファミレス9000店舗分)、CO2排出量の抑制(年間:羽田・那覇間往復約13万回分)などを日本生産性本部があげている。

 しかし、経済評論家の上念司氏は「経済効果の計算はいつも非常にいい加減で、一方がプラスになっても他がマイナスになってだいたいプラマイゼロになる。失うものは計算に入れていないはず。暑いといろいろ消費の出足は悪い」と指摘。また、終業時間の気温が高いことにお笑いタレントの小籔千豊は、「明るいカンカン照りの時間にビアガーデン行きます?日が暮れかける今の終業時間がベストタイム」と疑問を呈した。一方、オリンピックへの影響については、「午前中にできる競技の幅が増える」と述べた。

 既に2004年から3年間、北海道では札幌市を中心に705の企業や行政機関の約3万人が参加した、サマータイムの導入実験が行われている。その結果、「退社後の明るい時間が増え、行動の選択肢が拡大した」「事業所・家庭における省エネ効果があった」「退社後の地域活動(ボランティア活動など)が可能になった」といったメリットの声があがり、「普段よりいくらお金を使ったか」というアンケートでは、経営者の36%が「1~3万円未満」、従業員の34%が「5千円~1万円」と答え、「変化なし」と回答した経営者の10%、従業員の15%より多かった。

 上念氏はサマータイムが高緯度地域で効果が出やすい施策だと指摘。「年較差といって、気温の変化と日の長さの差が激しいところでやるとメリットがある。このアンケートも意味がなくて、GRP(都市の域内総生産)の成長率を見た方が早い」との見方を示した。

 では、サマータイム導入のデメリットにはどのようなものがあるのか。一般的には、時刻設定などシステム変更におけるコスト増加、生活リズムや体調変化への影響、残業時間の増加(終業時間になっても外が明るいため)などが想定されている。また、日本労働弁護団が2008年に出した反対意見では、「屋外作業者は、就労時間が延びることは確実」「サービス業でも、需要を期待して営業時間の延長必至」「長時間労働を余儀なくされる非正規労働者の増大」と労働時間延長への懸念をあげ、「サマータイム制度は1時間の早出に終わりかねない」と主張している。

 労働時間の延長について、慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は「長時間労働をさせられるのはどちらかというと正規労働者。非正規労働者はきっちり時間を切って給料をもらっている人が多い」とし、正規労働者の残業が増えることを懸念した。

 日本睡眠学会では、サマータイムが睡眠にも影響を与えると指摘している。人口の0.1~0.3%程度いるとされる睡眠障害者の症状悪化や新たな発症者を生む恐れがあるとし、睡眠障害の治療費、作業能率低下による業績の悪化や事故発生による経済的損失は年間1000億円を超えると警鐘を鳴らしている。

 ここまでの話を受けて、イラストエッセイストの犬山紙子氏は「やっぱり残業。街頭インタビューで『残業が増える』と言っていたのが現場の空気なのかなと。残業が増えると思うとあまり賛成という感じではない」と意見。小籔は「外で働いている人は、その分めちゃくちゃ暑い(日中の)2時間だけ休みを取るとか、休憩する形がいいかもしれない」と述べた。

 海外では既に導入されているサマータイムだが、廃止論も出ている。EUでは96年から導入されているが、今年の1月にフィンランドで7万人を超える嘆願署名が集められ、2月には欧州委員会にフィンランドが廃止を提案した。

 果たして、日本ではサマータイムの導入は現実のものとなるのか。

(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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Source: ハフィントンポスト