少年院入所経験、LGBT、音の入っていないCD…吉田豪氏に聴く、無限に拡がる地下アイドルの可能性

今、ライブの動員力やCDセールスにおいて”中堅”に位置づけられるアイドルグループの解散が相次いでおり、誰もが知る”国民的アイドル”と、知名度は高くないが究極の個性を爆発させている”地下アイドル”へと、業界の”2極化”が加速しているという。

 アイドルと経済学を研究している田中秀臣・上武大学教授は「2010年、2011年ぐらいにデビューしたグループは、中核メンバーが20代半ばくらいに来ていて、限界に達しているケースもある」と話す。

 アイドル業界に詳しいプロインタビュアーの吉田豪氏は、AbemaTV『AbemaPrime』の取材に「数年前から傾向はあったが、特に今年はそうだ。同じ事務所で同じ系統の若いグループがどんどん出てくると、ヲタはそちらに流れていってしまう。キャリアはあるもののファンの数は目減りして、CDも売れず、給料もそれほどもらえない。一人暮らしも難しいという現実に直面していくことになる。それでも地下(アイドル)の面白さは続いていて、ジャンルから何から幅が広がっている。正当に評価されていない人たちが山ほどいる」と話す。

そんな吉田氏に、いま注目の地下アイドルを教えてもらった。

■”ゲイでもアイドルになれる”がコンセプトの「二丁目の魁カミングアウト」

 別のアイドルグループの選考に漏れたメンバーで結成された通称”見捨てられたアイドル”こと「あヴぁんだんど」や、温泉旅館の若女将と介護施設管理者によるアイドルデュオ「AH(嗚呼)」、他にも”病み”と共存、引きこもり・イジメ・孤独といった悩みを克服すると卒業できるという「病ンドル」など、多種多彩な地下アイドルが活躍している。

また、キレッキレのダンスと完成度の高い楽曲で観客を魅了する「二丁目の魁カミングアウト」も人気だ。新宿2丁目で誕生し、メンバー全員がゲイをカミングアウトしている”LGBTアイドル”で、ツアーが決まればチケットは即完売、追加公演が組まれるほどだという。メンバーのミキティー本物は「ゲイだからといって、やりたいことを諦めたくないという気持ち。”ゲイでもアイドルになれる”というのがコンセプト」と話す。

■”アイドルをやりきる人”絵恋

 とりわけ吉田氏が「いまどき珍しいくらい、”やり過ぎ”なアイドル歌唱をちゃんとできる人なので面白い。アイドルをやりきる人」と実力を高く評価するのが「絵恋」だ。もともとは”神対応”がウリだったというが、ファンの”ガチ恋”をこじらせ、ストーカー的になってしまったことから、”毒舌”にキャラ変。すると今度はSっ気の強いキャラが人気を呼び、さらにファンを増やしたのだという。

去年、ファンのオタク32人と”結婚式”を挙げた絵恋は、今年7月に”新婚旅行”と銘打ったバーベキューイベントを開催する予定だったが台風が直撃。振替開催されたこの日は肉を焼いてあげたり、山葵をサービスしたりと、巧みにアメとムチを使い分けていた。ファンたちは「やっぱりキャラクター。良い加減に、痛いところをついてくる」「かわいいアイドルとか優しいアイドルはたくさんいると思うが、その中でもとびきりオタク思いだし、ライブもかっこいい」と絶賛していた。

■女子少年院に入っていた過去も…戦慄かなの

「少年院に2年くらい入っていて、それで出てきてからアイドルをやった」という異色の経歴を持つのが、戦慄かなのだ。

幼少時代に母親が育児放棄、小学生のころは学校ではイジメ、家では母親から暴力。中学校時代には何度も警察のお世話になった。高校は1年で中退し、傷害事件で女子少年院へ。1年8か月間入所、”長老”と呼ばれたという。夢を叶えるためにお金が必要になり、アイドルの道へ。「のーぷらん」のメンバーとしてデビューするも、大学受験のためグループを脱退。「最終面接で経歴を明かした。笑っている人もいたし、引いてる人もいた」という「ミスiD2018」ではサバイバル賞を受賞した。炎上ぶりも有名で、狩野英孝の”未成年援交疑惑”の相手をバラしたこともある。「Yahoo!ニュースに取り上げられたり、週刊文春が来たり」。

今春、某大学の法学部に入学し、育児放棄・児童虐待を救う団体を作る準備中だ。「少年院に入っていたことを明かしたのは、育児放棄のことをやりたかったから。アイドルがいきなりそういうこと言ってもうさんくさいから、まず自分の過去を公表した。別に女子少年院アイドルとして売り出したいわけではないし、過去とアイドルは切り離したい」と語った。

また、圧倒的歌唱力を誇るのが眉村ちあきだ。どんなお題でも即興で歌にできるのが特技で、「歌がうまい。作曲能力は天才レベル」と評される。それだけでなく、『アウト×デラックス』のオーディションでアウトな部分について聞かれるも『ない!』と即答するなど、天然すぎて、新しいエピソードが会うたびに増えるというのも魅力だ。

■”コンセプトが際立つ”ドッツ

 5人組アイドルグループ「・・・・・・・・・」、通称”ドッツ”は、表記は点が9個だが、呼び方が決まっていない。カチューシャのようなもので目元を隠しているが、「これが素顔」と話し、名前を聞くと「点(てん)」と答えるなど、吉田氏も「コンセプトが際立っている」と評価する。

 田中教授はドッツについて「ライブに行くと正統派。彼女たち自身はまさに”匿名”で、個性を与えるのはファン。見分けられるのもファンだけ。そしてファンの思いを最大限に引き出す。まさにファンがアイドルとイコールになっているような感じ。ファンなくして彼女たちは存在しない。僕も1年前に出会ったドッツちゃんがいるが、彼女を見分けられるのは僕だけ。彼女たちはサービスで心臓の音をくれる」と話す。グッズも個性的で、音の入っていないCDを販売、何とメンバーがつけているリストバンドからファンのスマホに心拍が送られてくるのだ。それだけではない。メンバーの睡眠データを3Dプリンターでオブジェにしたグッズをファンがイベントで被るのだという。

 個性派揃いの地下アイドル界は、ますますその幅を拡げていきそうだ。

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Source: ハフィントンポスト