安倍首相の“ごまかし答弁”の姿勢が官僚に伝播 ~前代未聞の不祥事続発の背景~

「大将というものは敬(うやま)われているようでその実、絶えず家来に落ち度を探されている」――。徳川家康が大将の心構えについて息子に語った言葉とされている(「徳川家康」山岡荘八著より)。

リーダーは、部下から、その言動を厳しい目で見られている、このことを常に肝に銘じなければならない。政治家である私たちほどそうだ。

安倍首相も部下たち(閣僚や霞が関)から、その一挙手一投足を、穴のあくほど見られているのだろう。この5年間の安倍首相の国会での、質問者を小ばかにしたような答弁、質問とは別のことを長々と話す”はぐらかし答弁”など、真摯に事実を語ろうとしない姿勢を部下たちはじっくり見ていた。はじめは批判的に見ていた人もいただろうが、5年の長期政権ともなれば、その姿勢に追随をしたほうが首相からの覚えめでたくなると考える部下たちが出てきても不思議ではない。

今回の政府の信じられない数々の不祥事の背景には、安倍首相の悪しき姿勢が部下たちに伝播してしまったということもあるのではなかろうか。

首相秘書官による「首相案件」発言疑惑、財務省による森友学園に関する公文書の改ざん、自衛隊の日報隠し、裁量労働制の比較データねつ造など深刻な不祥事が止まらない。国会や国民に真摯に説明しない姿勢は、安倍首相の答弁姿勢と重なる。

憲法66条には「内閣は行政権の行使について、国会に対して連帯して責任を負う」とある。安倍内閣は、この前代未聞の不祥事の責任をとるべきである。

今回、特にイラクの日報隠しには背筋が凍った。小野寺防衛大臣が「無い」と答弁していたイラクの日報が今年発見されたと謝罪して間もなく、今年ではなく昨年3月にすでに発見されていたことが判明したのだ。自衛隊は、大臣からの日報を探せという命令に背いて、あったものを無いことにしていた。自衛隊が国会や国民、ましてや防衛大臣のコントロールも効かなくなっているという証左だ。

日本は、戦前、軍部が暴走した反省に立って、政治家たる文民が、自衛隊に対して最高指揮権を持つシビリアンコントロール(文民統制)をしっかり効かせて軍事に対する政治の優先を確立することとした。この大原則が崩れようとしている。

「旋風20年」昭和のファクト・ブック

「旋風二十年 解禁昭和裏面史」という本がある。敗戦から4か月後の昭和20年12月、この本が発刊されると、たちまち売り切れ続出、それが、翌年、翌々年まで続く、大ベストセラーとなった。毎日新聞(戦時下は東京日日新聞)社会部長だった森正蔵氏が部下の新聞記者とともに、一連の昭和の戦争の事実を記した。虚偽の大本営発表を聞かされ続けていた国民にとって、どれもこれも初めて聞く話ばかりで、驚きを持って読まれた。昭和の”ファクト・ブック”といってもいいだろう。

例えば、これまで国民は、昭和6年の柳条湖事件について、南満州鉄道を爆破したのは中国軍の仕業だと信じていた。だからこそ、国民は、満州の日本人を守るため陸軍の増派を支持した。しかし、この本には、それが中国軍の仕業に見せかけた日本の関東軍の謀略であったことが記されている。今では誰でも知っている事実だが、仮に、当時、南満州鉄道爆破事件は関東軍の謀略であると正しく報道されていれば、その後の日本の歩みは異なっていたかもしれない。

「情報を操作して空気さえ作り上げれば国民は一気に極端な方向に動く」――。これが、70余年前の戦争の貴重な教訓だ。

政府の情報が操作される、政府の情報が正しく公開されない、これは一国の存立をも脅かす重大事態である。今、国家中枢の危機にあるといっても過言ではない。政府を監視する野党の責任の重さを痛感し、まずは、全容解明に全力で取り組み、徹底的に膿を出し切って参ります。

Source: ハフィントンポスト