「保育園に入れなくて、仕方なく」。やむなく幼稚園に通わせる「隠れ待機児童」の親たちの悲痛な声

親子が登園するイメージ

認可保育園の入園可否の通知が届き始め、SNSでは今年も 「#保育園落ちた」「 #保育園に入りたい」のハッシュタグがじわじわと広がっている。解消されない待機児童問題の中で、誤解を元に親たちにぶつけられる言葉がある。それは「幼稚園に入ればいいのでは?」というものだ。

幼稚園と保育園ーー。似たような施設だと思う人もいるかもしれない。しかし、実際その内容には、大きな違いがある。大雑把にいえば、幼稚園は教育施設。保育園は、働く親のために子供を預かる施設だ。

幼稚園は、専業主婦やフルタイム勤務ではない家庭の利用を想定している。そのため基本的に午後2~3時までと、終了が早い。夕方までの「預かり保育」を実施する園も多いが、参加者が少なかったり、統一したカリキュラムがなかったりと、保育園のそれとは内容が大きく違う。

そして、子どもを幼稚園へ通わせる親には、2種類の理由がある。純粋に子どもを通わせたかった親と、保育園に落ちたので仕方なく通わせている「隠れ待機児童」の親だ。

「保育園に落ちたから仕方なく」の選択は、さまざまな無理を家庭に生む。しかし、幼稚園に通っていることで「待機児童」にもカウントされず、その問題は、非常に見えづらい。

不本意ながら子供を幼稚園に通わせることになった、3つの家庭の話を聞いた。

保育園とは違う、幼稚園の「預かり保育」に新たな苦悩

東京都西部の区に住む中山麻衣子さん(仮名)は「子どものためを思って幼稚園を選んだはずなのに、何が正解だったのか分からない」と、肩を落とす。

中山さんは約4年前、長男・晃くん(仮名)の妊娠中に、体調を崩して仕事を辞めた。生後8カ月から週3回の一時預かり保育を利用して、別の会社に再就職。しかし、認可園のすべてに落ちて、二度目の退職を余儀なくされた。

ところが、3月下旬になって急に、区からの連絡。小規模保育所にキャンセルが出たため、今なら入れるというのだ。

小規模保育所とは、待機児童を解消するために2015年から始まった制度。小さなスペースで開設できるなどのメリットがある一方、対象年齢は0〜2歳に限定され、2歳のクラスを終えたら卒園しなければならない。しかし、仕事を続けたかった中山さんは、キャンセル枠によって、再就職を果たすことができた。

「当時、2歳クラスを卒園した後はどうすればいいのかと区に相談したら『認定こども園を増やすから、その頃には何とかなると思います』と言われたんです。それから3年経つけれど、こども園は当時からひとつも増えていません。いざ卒園というときには、幼稚園を強く勧められて……区の人でさえ、保育園やこども園がだめなら幼稚園に行けばいい、と思っているように感じました」

認可保育所の3歳児枠は、1歳よりもさらに激戦だ。入れる保証はない。自分が多少無理をしても、教育に良い場所へ行かせてやりたいとも思い、迷ったすえに幼稚園に決めた。

「保育園には入れなかったので、仕方なく。でも、通わせている幼稚園では9割くらいのおうちが専業主婦で、午後2時に幼稚園が終わった後、みんな子どもに習い事をさせているんですよね。うちは預かり保育の制度を使って、毎日夕方まで幼稚園で見てもらっているから、もちろんそんな時間はありません。他の子と同等にいろんなことをさせてやりたい、というプレッシャーも芽生えてきて……」と、中山さんは苦しそうに話す。

教育重視で幼稚園に入れたはずなのに、預かり保育の時間はテレビを見せていたり、ジャンクフードのお菓子を与えたりしている園の対応にも、納得がいかない。だったら粘って保育園を探したほうが、息子も夕方までのんびり楽しめるうえ、自分も楽だったのではないか。帰りの園バスから、疲れ切って寝ている子どもを抱いて帰るたび、悲しくなる。

いまは子どもへの罪悪感と、慌ただしい毎日が辛くて、幼稚園のメリットも感じられていません。説明会のときは預かり保育について熱心に聞いていたママも、入園してから仕事を辞めていました。やっぱり、うちのような幼稚園に通わせながら働くのには、無理があると思う」

悩む母親のイメージ

専業主婦が前提、他の保護者は”幼稚園のカルチャー”に満足しているけれど…

昔ながらの幼稚園で”お母さんの愛情弁当”といったフレーズが聞こえてくることに不安はあったけれど、家族の介護などがあり、自宅近くのこの幼稚園しか選べなかった。背に腹は代えられず、申し込みました」。

そう語るのは、東京都下に住む高橋梨香さん(仮名)。次男の裕樹くん(仮名)が、4歳になったこの春から幼稚園に通っている。

次男は、何年待っても認可保育所に入れませんでした。0歳から認証保育所に通わせてはいたものの、とても規模が小さくて、3歳以降を保育する環境は整っていない。しばらく我慢していましたが、やっぱり子どもにとって良い環境にいさせてやりたくて」。

通いはじめて8カ月。午後6時までの預かり保育を利用しているのは、高橋さんの家庭だけだ。毎日午後5時ごろには誰もいなくなり、そのあと裕樹くんは一人で過ごす。「早く迎えに来て、って泣くんですよね」と高橋さんは言う。

行事も平日ばかり。「(親も参加する)ブドウ狩りは火曜、雨の場合は水曜に順延」なんてこともあれば、プリント1枚で済むような連絡事項のために、平日の午後に保護者を集めた会合が開かれる。時短・効率化の意識はない。

「でも、その幼稚園はずっとその方針でやってきていて、他の保護者たちは満足しているんだから、本来それでいいはずなんです。問題は、あらゆるニーズがマッチしていないのにここへ通わせなければならないという、私たちの状況。最初から認可保育園に入れていれば、こんなことにはならなかったんですが……」と、高橋さんはため息をつく。

うちは幼稚園で良かった、でも「夫婦ともに内勤・フルタイムは厳しいかも」。

結果的に幼稚園でよかった、と語る人もいた。東京都西部に住む稲垣雄大さん(仮名)は、小規模保育所を卒園した3歳の長男・翼くん(仮名)を幼稚園に入れ、現状に不満はない。しかし、自身の働き方が柔軟だからこそだとも感じている。

「はじめは行き先がなくて仕方なくでしたが、だんだん幼稚園のイメージが変わってきたんです。預かり保育を使えば、時間的にはさほど保育園と変わらない。広い園庭でたっぷり遊んだり、いろんな体験をしたり、教育面ではやっぱり充実しています」

平日の行事参加や役員などはしんどいけれど、夫婦で協力しあって、何とかこなしている。妻は翼くんの幼稚園入園と第二子の出産を機に、定時で帰れる仕事に転職した。また、稲垣さん自身も外回りの営業職なので、時間には融通が効くという。

「でも、夫婦ともに内勤でフルタイムだったら、厳しいんじゃないかな」と、稲垣さん。行事で親が来ていない子どももいるが、そのさみしそうな姿を見ると、我が子にこんな思いはさせたくない、と感じてしまうという。

増えない「認定こども園」

「待機児童となった子どもを幼稚園に通わせる」という話自体は、一見合理的だ。

少子化や共働き世帯の増加で、幼稚園の利用者は減っている。1978年には250万近くいた園児は、2017年度には約127万人と半減。全国で見れば幼稚園は現在、定員の68%(2015年文科省学校基本調査)しか満たされておらず、大幅な定員割れを起こしている。

しかし、3つの家庭の話からは、現状の幼稚園がすぐに保育園の代わりになる施設ではないことが、浮かび上がってきた。

共働き家庭が通わせられるように、2006年には「認定こども園」制度も定められた。こちらは、幼稚園と保育園の機能を併せ持つ施設で、預かり時間やお弁当の有無などにも配慮がある。しかし問題は、幼稚園から「認定こども園」に転じたのが、わずかだということ。特に、待機児童問題が深刻な東京都では、その傾向が顕著だ。幼稚園は1004カ所あるにも関わらず、認定こども園の数は109にとどまっている。

日本総研は「将来の幼稚園ニーズが減少する」という試算を発表した。その理由について、レポートでは以下のように分析している。

私立幼稚園には園児を選ぶ自由があるが、認定こども園となれば応諾義務が生じるため、私立幼稚園にとって認定こども園化は経営上の制約を負うことともなる。このため、東京都がまさにそうであるように、園児をある程度確保できる状況では、幼稚園の認定こども園化が進みにくい傾向がある。(JR Iレビュー 2017 Vol.3)

幼稚園が保育園的な機能を持つ上では、さらに「カルチャー」の壁も厚いようだ。

東京都内のある私立幼稚園。来春に小規模保育所の卒園を控えた子を持つ保護者は、説明会での園長の言葉に唖然とした。

「子どもたちにとって、お父さんは社会を代表する存在です。だからお母さんは、黙ってお父さんのおかずを一品多くしてあげてください。その代わり、お父さんはお母さんのお話を、つまらなくてもうんうん聞いてあげてください。それだけで家庭はうまくいくんです」

「ひきこもりは、100%親の責任。幼稚園選びは、母としての生き方を選ぶことです」

「仕事を理由に、父母会や役員を断るのは辞めてください」

保護者はこう語る。「古い育児観やジェンダーロールの押しつけ、共働き家庭への理解のなさが透けて見えました。でも、微笑みながらうなずく保護者がいるのを見て、やはりここは自分たちの居場所ではない、と痛感したんです」。

幼稚園で遊ぶイメージ

隠れ待機児童の幼稚園児は、申込みすらしていない

この問題を見えづらくしている、別の問題もある。「仕方なく幼稚園に入れた」家庭は、待機児童としてカウントされていないことだ。

本当は保育園に入れたかったという3人だが、実は3人とも、幼稚園に入園するタイミングでは認可保育園に申込みをしていない。そのため、自治体が計上する「待機児童」の扱いにはなっておらず、このように苦しむ家庭の数はデータに反映されていないのだ。

その理由は、申し込みの順序にある。

小規模保育所の卒園後、幼稚園に通わせた稲垣さんは、以下のように語っている。

「小規模保育所の最後の1年、ふたたび保活を始めたところ、どうやら3歳で保育園に入るのはかなり厳しいことがわかってきました。認可園の申請よりも幼稚園の締切のほうが早いので、保育園に入れる保証がない以上、幼稚園を選ばざるを得なかったんです

この問題を、先の高橋さん、中山さんも同様に抱えていた。どの地域も幼稚園の申し込みは11月ごろなのに対し、認可園の結果がわかるのは2月ごろ。都心では、保育園に落ちてから動いても、入れる幼稚園がなかなかない。行き場を失うことを恐れて、多くの親たちが保育園に申込みすらせず、幼稚園を選んでいる。

認可保育所に落ちてから幼稚園を検討できるようなスケジュールになれば、親は選択肢を増やせる。だが、それは幼稚園の運営上、かなり難しいだろう。

しかし、保育園に行けなくて苦しみながら幼稚園に通っている家庭。そのためにやむなく仕事や勤務形態を変えている親も、確かにここにいる。

こうした家庭に、「保育園がないなら幼稚園に行けばいいじゃない」とは、決して言えないのではないだろうか。

(取材・文:菅原さくら 編集:泉谷由梨子)


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Source: ハフィントンポスト